館長あいさつ

附属図書館長からのご挨拶

 2021年4月1日に熊本大学附属図書館長に就任した田中朋弘と申します。専門は倫理学で、大学院人文社会科学研究部に所属しています。わたしはこれまで図書館に、二つのイメージを持ってきました。一つは、わくわくして何時間でも居られる空間というイメージです。これは、小学生のころ、毎日のように地域の図書館や学校の図書室に通っていた時に抱いていたものです。小学生の頃は、伝記ものや児童小説を読み漁りました。熊大にもゆかりが深い夏目漱石の『吾輩は猫である』を読んだのは、小学5年生頃だったように記憶しています。他方で大学図書館には、少し居住まいを正したくなるような、整理整頓された知の貯蔵庫というイメージがあります。このイメージは、大学に入って以降、特に研究を志すようになってからのものです。所定の手続きをしてからしか手に取ることができない貴重図書を、他に人のいない書庫の中で長時間読むような経験は、他に得難いものでした。ただ、こうした感覚もまた、広い意味での「わくわく感」と言えば、そう言えるのかもしれません。

 コロナウイルスの蔓延のために、本年度も引き続き、その都度の各種利用制限をお願いしております。皆様のご協力に感謝申し上げます。附属図書館としては、感染症対策を十分に行いながら、できるだけ利用者の利便性を確保できるように日々検討を重ね、状況に応じたアクションをしております。そして館内には、ご利用に際してお願いしたい事柄をいろいろ掲示してあります。若干ご面倒でも、不特定多数の利用者が毎日相当数利用する施設であることを踏まえて、ご協力いただければ幸いに存じます。これは、個人の利益と全体の利益をどうバランスするべきなのかという問題と見なすことができます。わたしの特定の行為は、他人の利害と密接に結びついているのですが、逆も同じで、わたしの利害もまた、他人の特定の行為に影響を受けていると考えられます。これは倫理学的にも重要なテーマです。

 図書館が、利用者の皆さまにとって、助けとなる存在であり、かつ落ち着ける場所であり続けることができるように、また、できるなら「わくわく」するような場所であるように、職責を果たしたいと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

熊本大学附属図書館長 田中朋弘