附属図書館長からのご挨拶
2025年4月1日からの2年間、熊本大学附属図書館長を務めることになりました、大学院先端科学研究部(理学系)の高野博嘉です。専門は、植物細胞学で、光合成を行う細胞小器官である葉緑体の分裂・増殖機構を研究しています。私、子供の頃から本が好きで、高校時代の小遣いはほぼ本に消えていました。本を見るだけでも好きで、友達との待ち合わせは本屋で、大学生の時は本屋でアルバイトもしていました。当時の下宿近くの東京の中央本線阿佐ヶ谷駅前の本屋ですが、Google mapで探してみたところ、もう無くなっているようです。残念。と書きつつも、エッセイは別にして、最近は数名のお気に入りの作家以外については、小説をあまり読まなくなりました。というのも、生物学の論文の中に、事実は小説より奇なり、を実感するような発見が一杯あるからで、もっぱら論文を読んで楽しんでいます。
さて、私事はさておき、図書館の紹介をしましょう。熊本大学附属図書館のメインの建物は黒髪北地区にあります。街中から県道337号を辿り、旧第五高等中学校の表門で、通称「赤門」と呼ばれている門を入り、道なりに右手に進んでいくと、ガラスで覆われた大きな建物が見えてきます。これが、ひご未来図書館(中央館)です。熊大の学生さんであれば、学生証で入館できます。ふらっ、と入りたくなったら、ぜひ一度入ってみてください。ゲートに学生証をタッチして中に入ると、新着雑誌コーナーがあります。ロビーで小さな展示をしている場合もあります。雑誌コーナーの後方はラーニングコモンズというスペースで、中央にアクティブエリアが広がっています。ここは、仲間たちと議論できる場所で、講義等のレポートを数名であれやこれや言いながら仕上げることも可能です。ラーニングコモンズには、プロジェクターが設置され、プレゼンテーションを映しながら議論できるグループ学修室や、レポートの作成等ができるPCコーナーもあります。
ラーニングコモンズから離れた1階の南棟や本館2階は、書棚と閲覧席のある、一般的な図書館のイメージに近い場所となります。静かに本を読んだり、一人で勉強したりしましょう。2階の奥には、スーパーサイレントルームもあるので、小さな声でも気になる、という人は、そちらを利用するのが良いでしょう。私が大学生だった40年ほど前の図書館には、ラーニングコモンズのような場所はなく、書棚と閲覧室の図書館でした。静謐な感じのする図書館が好きで講義の空き時間にはよく行っていました。附属図書館で棚卸しのアルバイトをしたことも良い思い出です。その時は、まさか、自分が大学の附属図書館の館長になるとは思ってもいませんでした。図書館では、勿論、本を借りることもできます。講義関連図書を蔵書検索で調べて、お目当ての本だけを借りることもできますが、書棚をぼーっと眺めつつ、目についた本を借りてみる、という手もあります。それが、新たな出会いとなるかもしれません。
大学附属図書館には、教育・学修支援の他にも重要なミッションがあります。一つ目は、知の集積所として学術情報を収集・蓄積するとともに、それらを社会に還元することです。附属図書館では、令和7年4月に貴重資料デジタルアーカイブを新たに公開しました。毎年行っている貴重資料展も続けていく予定です。二つ目は、研究支援活動として、学術雑誌の電子ジャーナルやデータベース等の安定的かつ継続的な利用を可能としていくことで、オープンサイエンスの推進も重要な課題です。これらについても、図書館をあげて取り組んでいきますので、ぜひ皆さまのご協力をよろしくお願い申し上げます。
熊本大学附属図書館長 高野博嘉