館内展示(1階 ラーニングコモンズ) |
江戸時代の刑罰について、時代劇のワンシーン等々から「怖い」「残酷」といったことをイメージしていませんか? 江戸時代には、磔や獄門、遠島や追放、入墨などといった現代とは異なる特有の刑罰がいくつも存在していました。本企画展では、獄門、入墨、切腹の3つの刑罰を主に取り上げ、その執行方法についてご紹介し、江戸幕府による合法的支配の実態を紐解いていきます。
企画展名物!『解説シート』 |
今回も、学生力作の『解説シート』を無料配布します♪
具体的な法令や刑罰について記した古文書を、詳細な解説付きで紹介した『解説シート』を手に展示物をご覧下さい。今日とは異なる江戸幕府による支配のあり方が、体感いただけます。
なぜ江戸幕府が長く続いたのか―その理由を探れば、幕府や藩による合法的支配が展開されていたことがあげられます。17世紀後期になると武断政治から文治政治へと転換する動きが生じると、官僚制支配が定着していきます。そこに、幕府が積極的に取り入れていた儒教精神が市中で涵養していき、日本国内では“法の支配”が根付いてきました。幕藩体制が確立されるなか、各地では中世社会から脱却した近世社会が広がりました。
江戸時代には様々な法律が発布された一方で、幕府や藩で独自の法体系が築かれていました。「江戸の法度の如し」という、幕府法の遵守を基本原則としながら、藩による立法も認められています。熊本藩では中国の明律に倣った「刑法草書」が編纂されており、これは他藩にも影響を与えました。さらに、刑罰にも地域性がみられるなど、今日とは異なる様相を呈していました。
本企画展は、江戸幕府による“法の支配”に注目し、当時の合法的支配の実態について取り上げたものです。幕府が寛保2(1742)年に制定した「公事方御定書」によって、日本は一層の法治が進展したと評価されています。罰金刑にあたる過料、笞で身体的苦痛を与える敲、さらに罪人に羞恥心を与えるとともに一般に注意喚起する入墨刑が導入されたことで、これまでの厳刑主義から寛刑主義へと変容しました。ここには、罪人への改悛を期するものもあり、今日の刑法観に通じる点もみられます。
そこで、江戸幕府による合法的支配の実態を、具体的な法令や刑罰について記した古文書から紐解いていきます。今日とは異なる支配のあり方について理解を深めてもらう機会となれば幸甚です。
令和4(2022)年1月24日
熊本大学大学院人文社会科学研究部
准教授 安高 啓明